北京へと向かう走り
第49回札幌国際ハーフマラソンは、デジタル・ハイビジョンによる初めての放送となりました。木々の緑と青い空が鮮明に映し出され、札幌のカラッとした空気、透明感が届いてくるようでした。そしてそれに負けないくらい爽やかだったのが、大会記録で優勝した野口みずきさん。
私はこれまでとはどこか違う野口さんを感じていました。一言で言うと“明るい”、そして“潤っている”。何とも言えない充実感が漂っていたのです。レース2日前、「テレビで岡本太郎さんの特集を観ました。“過去でも未来でもない、今が大事!”と話されるのに感動し、元気を貰いました」と彼女は大きな目を輝かせました。
レース前日は円山競技場で練習。ユニフォーム姿になった彼女を見て、びっくり。おしりから太ももにかけて、まるでトラックの400m選手のような筋肉がついているのです。聞けば、上り下りの多い長野県菅平で長く走り、自然についた筋肉とのこと。「合宿中に可愛いキツネに逢いました」と無邪気に話す野口さん。隣で「今度はツチノコ(よく野口さんはツチノコをみたという)じゃなかったんや」と豪快に笑う藤田信之監督。
これまでよりもお喋りになった野口さん。この明るさはきっと、彼女を取り巻く生活から生まれてくるのでしょう。食事も練習中も彼女はいつも藤田監督と広瀬永和コーチと一緒ですが、監督は真面目な妹を見守る父親のような存在。そして広瀬コーチは兄貴のように温かく彼女を支えています。北京五輪で金メダルをとることに没頭したい、今に精一杯いきたい、野口さんにとって、一丸となって歩めるこの環境は理想的なのです。この後、3人は9月のベルリンマラソンまで約2ヶ月間スイス・サンモリッツで合宿に入ります。この調子でいけば野口さんは自らのもつ日本記録を更新するでしょう。そして北京五輪の舞台へ。活き活きと家族の旅は続きます。
(共同通信/2006年7月10日配信)
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