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おしゃべり散歩道2006

運動で学力向上

 私がよく歩く東京・旧山手通りや西郷山公園。木々が少しずつ色付き始め、足元にはどんぐりが転がっていることもあります。丸かったり、細長かったり、様々な形のどんぐりを拾いながらのんびり歩く時間は、ただただ楽しくてあっという間に時間が過ぎてしまうのです。
 「歩いている時にはすごく頭が良くなった気がするんです」。先日ある会議でお会いした小林寛道さん(東京大学大学院教授)に話してみました。私は歩いている時に一番考えがまとまり、ふと良いアイディアも浮かびます。また6年前から始めた俳句も歩いている時に詠む句が多いのです。すると小林さんは「そうでしょう。いいリズムで歩くと脳内に幸福感ややる気をもたらすホルモンが分泌されますからね」と言われました。小林さんは教育について話し合う会議の場でも、よく「運動すれば学力が向上する!」と、脳科学の面からスポーツを捉え、子ども達に“動きなさい、外で遊びなさい”と勧めるのです。以来、私は運動と脳の関係に興味を持ち、少しだけ調べてみました。
 そもそも人間は直立二足歩行を始めて(およそ350万年前)から脳が発達したと言われています。移動するために歩き、両手を自由に動かすことで、脊髄を通して脳へどんどん刺激が送り込まれたのです。そして長い年月をかけ進化し、脳の大きさはアウストラロピテクス時代の500tから現代人では1500tと3倍に増えました。偉大な哲学者ソクラテスもその弟子のプラトンも、またその弟子のアリストテレスも逍遥学派と言われるように、学園の中をぶらぶらと歩きながら哲学論議を交わしました。俳聖・松尾芭蕉も奥の細道では東北・北陸約二1400qを5ヶ月かけて歩いたのです。
 体を動かすのに最適な季節。“体”にも“頭”にも良いウォーキングで、秋を闊歩しましょう。

(共同通信/2006年10月9日配信)

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