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おしゃべり散歩道2006

娘を信じる母の愛情

 金木犀の香り漂う10月、嬉しい2つの出逢いがありました。まず荒川静香さんに、スポーツ報道のあり方を考えるシンポジウムでご一緒できたこと。私はアナウンサーの土井さんと共に進行役。パネリストの一人に荒川さんが出席されたのです。ベージュと茶系のツートーンの服にロングブーツ姿。彼女の落ち着いた雰囲気にぴったりです。「クールビューティーと言われることをどう思われますか」という土井さんの質問に、「人がつけるイメージは気にしません」と笑顔で答えたのです。
 私は荒川さんがトリノ五輪で金メダルに輝いた後に、ドラマに出演したりキャスターに挑戦する姿勢について尋ねました。すると「五輪の金メダルは単なるアマチュアの頂点でしかありません。でもそれが次に何かをするための切符になりました。これからいろんなことにチャレンジしたいです」と。言葉を選びながら淡々と話す思慮深い表情の荒川さん。その言葉の中で印象的だったのは、「私はあまり目立つことは好きではありません。2番か3番くらいがのびのびと出来ていいですね」と話したことです。
 それから数日後、別のシンポジウムで荒川さんのお母さんにお逢いしました。たいへん明るく気さくな方で、顔はよく似ています。娘さんの印象をお話すると、「本当はおしゃべりで面白いんですよ」と。「子どもの頃から運動が大好きで、始めはスイミングに通っていたんです。走るのも速く、学校のマラソン大会で優勝したこともありました」と嬉しそうに話してくれました。
 また一人っ子の静香さんに対し、お母さんは一切強制をせず自由にやりたいことをやらせたそうです。「いろいろ言うより、黙って見守るほうが親としては辛いことでしたけどね」。娘を信じる朗らかなお母さんの愛情が、偉大な金メダリストを育んだのだとしみじみ感じました。

(共同通信/2006年10月30日配信)

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