新星誕生 将来に夢託し
宮崎県庁前の楠並木、新春の陽光が選手達にスポットライトを当てているようでした。1月6日に開催された第30回宮崎女子ロードレース大会。今年で幕を下ろすことになり、それを惜しむように沿道に大勢の観客が訪れました。この大会は新星誕生というに相応しいもの。野口みずきさんが2002年に優勝した後、世に出ました。川上優子さんや千葉真子さん等の名ランナーを育んだ大会でもあります。
さて、今年はどんな新星が誕生するだろうと、私はラジオ中継をしながら、南国の木々のような明るい気持ちでいました。序盤、藤永佳子さん(資生堂)が先頭で約10人の集団を引っ張る中、10キロ過ぎに集団から飛び出したのは初ハーフマラソンの勝又美咲さん(第一生命)でした。強風でワシントニアパームが大きく揺れ、他の選手達が横風に足を取られバランスを崩す中、勝又さんの所にだけ風が吹いていないような力強い走り。大きな走りで後続をぐいぐいと引き離し、トップでゴール(1時間10分27秒)する姿に私は衝撃を受けました。
ゴール後、監督の山下佐知子さんの所へ行き「新星誕生ね。尾崎好美さん(ベルリン世界陸上マラソン銀メダリスト)に続き、楽しみな選手ね」と興奮気味に話すと、「まだまだですよ。底力はあるけれど体調に波があるから、それを克服しないと」と山下さん。尾崎さんがベルリンに向う合宿で勝又さんは練習パートナーを務めました。大会後に尾崎さんは「勝又さんがいなければメダルは取れなかった」と話したのです。尾崎さんの活躍を喜んだ勝又さんは自信を持ち、きっと自分のマラソンに夢を繋げているに違いありません。飛躍へ向けて一歩を踏み出した選手に夢を託し、大会は幕を下ろしました。
(共同通信/2010年1月8日配信)
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