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おしゃべり散歩道2010

龍馬脱藩の道を歩く

 立春を過ぎ間もなくの頃、高知龍馬空港へ。「まっことよう来た」というように、着物姿の坂本龍馬像に出迎えられました。今回は龍馬が土佐藩(勤王党)から脱藩して、伊予へ向かう道の所々を歩くという仕事。
 空港からご一緒したのは現代龍馬学会長の永国淳哉さんです。さっそく龍馬が176pと書物にあったのに、空港の像が小柄だったことを伝えると「確かに、龍馬の着物からみると180pは超えていましたね」と永国さん。それから私たちは高知城下から西に向かったであろう龍馬の足跡を辿り、土佐市へ。黒岩山近くの峠を越え宇佐の海へ向かうルートを歩きました。龍馬といえば桂浜から太平洋を眺め異国に思いを馳せている海のイメージでしたが、実際土佐は山ばかり。どこへ行くにも峠を越えます。私たちが歩いた峠は当時津波の避難場所となっていた急な坂道。椎の木等の雑林で落ち葉も多い。私は踏みしめる度にサクッサクッと聞こえる足音に、きっと3月にこの道を歩いた龍馬も静かな林に響く自分の足音に、前へ前へと覚悟の気持ちを高めていったのではないかと感じました。
 その後車で東津野に立ち寄り、土佐勤王党で最初に脱藩したといわれる吉村虎太郎の銅像を見た後、梼原へ。そこで龍馬の格好をしたボランティアガイドの西村善幸さんと合流。一緒に梼原を抜ける道を歩きながら「龍馬はこの町で一泊した際に、朝までお酒を飲んでいたと言われています」と、当時龍馬にお酌をした女性から語り継がれる話を聞かせて頂きました。道は急斜面で木の根や岩でデコボコ。草鞋を履き3日で約170qを踏破したという龍馬の脚筋力には驚かされます。偉人の気持ちを探りながら歴史の道を歩くのは、いとをかしと感じた春の日でした。

(共同通信/2010年2月8日配信)

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