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おしゃべり散歩道2010

新緑、薫風の奈良へ

 平城遷都1300年を迎えた奈良。先日新緑の風渡る中、飛鳥から平城京へ向かう「山の辺の道」をテレビの仕事で歩きました。一緒に歩いたのは郷土史家で万葉歌に造詣の深い室原慶和さんと約百名の参加者の皆さん。最近、卑弥呼のものではないかと言われる鏡が発掘された纏向(まきむく)遺跡にも立ち寄るとのことで皆、興味津々の面持ちでした。室原さんは山の辺の道が古事記にも登場する日本最古の幹線道路だと説明し、「清少納言なども歩いているんですよ。歴史上の人物の足跡に自分の足跡を重ねましょう」と。歴史好きで万葉集を好んで読むような参加者の皆さんの顔がほころびました。スタートした桜井駅から30分ほど歩き、仏教伝来の石碑がある初瀬川の堤防に着くと、近くの桜井高校野球部がダッシュの練習中でした。私たちが通りかかると「こんにちはー!」と全員が挨拶し練習を中断。坊主頭が並んで道を空けてくれる優しさに、仏教伝来の地に相応しい清廉さを感じました。
 そして日本最古級の大神(おおみわ)神社へ。境内の小高い丘を上ると大和三山が一望でき、古に思いを馳せていると、室原さんが万葉集の中から、中大兄皇子と大海人皇子と額田王の三角関係を大和三山に例えて詠んだ歌について説明。のどかな風景に、ちょっと歴史のわさびがききました。
 昼食後、山の辺の道に別れを告げ、纏向遺跡へ。「あれ?」「どこ?」とざわめきが。「今は調査を終え、埋めました。ただの草むらになってますが、足の下です」と室原さん。皆、大笑い。「歩くという漢字は足跡の象形文字です」という永六輔さんの言葉を思い出しながら、歴史の道を良き説明と共に歩く楽しさを満喫しました。

(共同通信/2010年4月30日配信)

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