長時間練習は必要か
先日、深夜のスポーツ番組で元プロ野球選手の桑田真澄さんにお会いしました。語り口が穏やかで大変知的な方。この日は桑田さんの卒業論文(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科)の内容について議論に。桑田さんの話によると、野球は精神論に偏り過ぎている。練習時間が長過ぎ、1000本ノックに代表されるようなスパルタ的練習や技術向上に合理性のない練習が多いと。子ども達が「好きだ」という気持ちで野球を続けることが大切だと力説されたのです。
放送前の楽屋は、このコーナーで激論を交わしてもらおうと、賛成派と反対派に分かれて待機。私は反対意見側に。その部屋には元日本女子ソフトボール監督の宇津木妙子さんもいらっしゃり、「技術の前に精神を鍛えないとね」とハスキーな声でバッサリ。すると隣で高橋尚子さんが「そうなんです。マラソンでもスタートラインに立った時、体がギリギリの状態で頑張った練習でしか、自分に自信を持てないんです」と。そこに元横綱の花田勝さんが参戦。「藤島部屋では練習時間なんて考えたことがないです。長時間の練習で心臓を鍛えないと、何も始りませんからね」。そして私も選手の頃に、毎日練習後に必ず3000回の腹筋運動をしたことを話し、「意味がないと思われる練習に意味があったりするんですよね」と。楽屋は放送寸前まで熱気に包まれました。
そして生放送。宇津木さんが「必要以上のノックも必要なのよ。打球に食らいつく、諦めない心を鍛えることが大切」とストライクを投げると、「宇津木さんに言われたので、今日はこのへんで終わりにしましょう」と桑田さん。大きな笑いに包まれた後、ラモス瑠偉さん達ら賛成意見の攻撃が始まりました。
(共同通信/2010年5月17日配信)
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