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おしゃべり散歩道2010

もろ刃の剣の高地練習

 サッカーW杯はスペインの初優勝で終わりましたが、日本代表選手たちが死力を尽くして戦った興奮はまだ冷めやりません。清々しい表情の選手達と共に、会心の笑みで帰国したのは杉田正明さん(三重大学准教授)。高地トレーニングを指導するスタッフとしてスイス合宿から本番まで42日間、選手達と帯同しました。これまで杉田さんは陸上競技の医科学スタッフとして、五輪等で実績を上げてこられたのです。そして今回、W杯本番のスタジアムが高地にあるために、岡田監督に依頼されての大役でした。「選手の体をチェックしたデータを説明すると監督は、練習強度を変えたり、休みのタイミングを決めたりしてくれました」と杉田さんは話します。大会後、“杉田先生、高地トレーニング大成功”と書かれた全員のサイン入りの代表ユニフォームを贈られ、「至高のプレゼントです」と杉田さんは安堵の表情を隠せません。
 陸上長距離種目の選手達にとって、高地トレーニングは珍しくありません。ただ、高地への順応や効果には個人差があります。7月上旬の札幌国際ハーフマラソンでは、期待された赤羽有紀子さんが7位に。試合続きで疲れもあったと思いますが、札幌のレース直前まで行っていた米・ボルダーでの初高地合宿直後の血液検査の結果は軽い貧血状態であったとのこと。夫でコーチの周平さんは「高地練習は期間や強度、休養の取り方、(レースに合わせ)高地から降りるタイミング等、課題は多いです」とその難しさを話します。心肺機能を高めてくれると同時に、体調不良のリスクも高まる高地練習は、まさに両刃の剣。杉田さんのような研究者との連携が益々重要になってくるでしょう。

(共同通信/2010年7月12日配信)

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