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おしゃべり散歩道2010

まるでスポーツ合宿

 「盲導犬ベルナ」という本の読書感想文の審査員をしたことをきっかけに著者の郡司ななえさんと親しくさせて頂いています。ななえさんは全盲であること忘れさせてくれるほど言葉の表現力が素晴らしく、ユーモアに富み、一緒にいてたまらなく楽しい人です。ななえさんのパートナーはベルナ、ガーランド、ペリラに続き、今は4代目ウラン。「犬の方が寿命が短いでしょ。別れの辛さを乗り越えることは大変よ」と話します。通常、盲導犬は引退後にボランティアの家で余生を過ごしますが、「お世話になった分、最期はお世話したいの」とななえさん。現役引退後も見看っています。2月、「いまどきの子」と話していたペリラを15歳で見送り、7月から新しいパートナーのウランと練習を開始。アイメイト協会で4週間の合宿生活を行いながら視覚障害者と盲導犬は訓練を受けるのです。練習は午前と午後、共に2、3時間行い、夜は1時間の反省会。まるでスポーツ選手の合宿のようです。私はデパートでの練習を見学に。売り場には曲がり角がたくさんあります。その度に一度立ち止まらなければいけないのにウランは素通りすることも。するとななえさんは「ノー」と叱り、上手にできると「コーナー、グッド」と褒めます。エレベーターではドアの場所を伝えた後、ボタンの位置を鼻先で教えます。最初はうまくいかないウラン。トレーナーに教わりながら、ななえさんはウランの顔を何度も何度も鼻先をボタンの方へ。そしてうまくできると愛情込めて頭を撫でるのです。「10月10日生まれのウランは運動神経はいいけどおっとりしている」とななえさん。人の目となるための地道な訓練に心打たれました。

(共同通信/2010年8月9日配信)

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