世界へ向かうクラブチーム
今年11月、中国・広州でアジア大会が開催されます。女子マラソンの日本代表は嶋原清子さん、加納由理さんの二人。二人ともセカンドウインド・アスリートクラブ(SWAC)に所属しています。日本の長距離選手の殆んどが実業団チームに所属する中、クラブチームから二人の代表が選ばれたのは初めてです。代表の川越学さんは3年前のクラブ設立当初、「企業の業績に左右されない形で、トップアスリートも市民ランナーも各々の目標に向かえるチームづくりをしたい」と話していました。実際、嶋原さんや加納さんは、大阪や北海道で自らのレース本番に向かいながら、大会前日にはチーム主催の教室でその地域の市民ランナーを指導する等、地道な活動を行っています。今のランニング人気にSWACの活動が大きく影響していると感じるのです。
そして7月末、私はSWAC恒例の菅平合宿を訪問。高原の涼やかな風が吹く陸上競技場には40名程のランナーが集まり、その日は1000mのインターバル走を5本行っていました。レベルに合わせて5チームに分かれ、そのうち2チームは嶋原さんと加納さんが先頭で引っ張ります。リカバリーのジョグの時に二人はランナーを励ましたり、フォームのアドバイスをしたりと休みなく周りを気遣っていたのです。普通、選手は自分の練習に集中したいと思うもの。「市民ランナーの皆さんに教えることで消耗しない?」と私は素直な気持ちをぶつけました。すると、「いや、むしろ一緒に練習することで色々教えられるんですよ。チームメイトが多いっていいでしょ」と嶋原さん。スポーツの強化と普及を同時に実現するクラブチームが世界へと動き出します。
(共同通信/2010年8月16日配信)
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