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おしゃべり散歩道2010

長いトンネル抜けたエース

 着地のたびにピシャピシャと跳ねあがる力強い水しぶき。野口みずきさんは自分の足音に、レースに戻ってきた喜びを噛みしめているようにみえました。
 10月24日、実業団女子駅伝西日本大会。野口さんが所属するシスメックスチームは創部5年目にして初の駅伝出場となり、彼女はエース区間の3区を任せられたのです。野口さんの公式レースへの出場は2年5カ月ぶり。前日、開会式の会場となった福岡県宗像市役所には、たくさんの市民と共にマスコミ関係者も大勢集まり、彼女は少し緊張気味でした。「野口は今6割位の出来です。1キロを3分15秒から20秒位で走ることを予定しています」と廣瀬永和監督。
 大雨の中のレースは1区からワコールが飛び出し、2位に大塚製薬、野口さんは1位から17秒差の3位でたすきを受け取りました。すると、風のような軽やかさで走り始めたのです。移動中継車から私は解説をしながら、手元の時計をみると、最初の1キロが3分05秒、次の1キロが3分08秒と予想以上の速さ。ちょっと速過ぎることが心配になりました。北京五輪の頃と比べると、上半身が細くなったように感じられましたが、脚の動きはほとんど同じ。長いブランクを感じさせません。さすがに後半はペースが落ちましたが、それでも1キロ3分30秒以内。
 レース後、野口さんは「前半、気負ってしまいました。今日の出来は70点。でも若い人たちに交じっての区間5位は、まだいけるかな」とホッとした様子。久々のレースが駅伝だったことで責任を感じ、「途中棄権したらどうしよう」という不安もあったと本音を漏らしました。日本のエースが長いトンネルを抜けて、ロンドン五輪へ走りだしました。

(共同通信/2010年10月25日配信)

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