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おしゃべり散歩道2010

武冨監督の情熱と手腕

 金華山の頂きは澄み渡る空に映え、岐阜城が美濃路を走る選手達を見守っているようでした。12月19日、第30回全日本実業団女子駅伝で天満屋チームが初優勝。ピンクのユニフォームの躍動感に冷たい空気が華やいだのです。優勝候補と言われ5区まで競り合った第一生命の山下佐知子監督はレース後「負けた相手が天満屋だから、納得できる気がする。悔しいけどね」と。連覇を狙った三井住友海上の渡辺重治監督も「天満屋なら仕方ないかな。また頑張ります」と。優勝したチームに対して他チームの監督がこれほどの敬意を払うのは珍しいことです。それは天満屋の武冨豊監督がこれまでシドニー、アテネ、北京と次々にマラソン五輪代表を育て上げているという実績。また、チームは岡山を拠点に選手勧誘でも有利といえない中、地道な練習の積み上げで創部から19年目にして優勝したこと。更には武冨さんが日本陸上競技連盟のマラソン部長としても、女子長距離界全体のレベルアップに最善を尽くしていることがあげられます。
 夏の合同合宿メニューの中には10km走を5本という非常に厳しい練習も。「効率ばかりでなく、達成感を味わえるドロ臭い練習も大事」と武冨さん。その合宿で心のスタミナを養った各チームの選手達が、秋以降活躍しているのです。
 優勝後、武冨さんとマラソンのペースメーカーの話題に。福岡国際でペースメーカーが突然ペースを上げ、その存在意義を問われています。「女子の場合は若い選手の育成のために、レースで速いペースに喰らいつく力を養うことが大事。勝負の駆け引きはスピードが身についてから」と武冨さん。56歳、名将の目は世界へと輝きます。

(共同通信/2010年12月20日配信)

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