多くを背負い過ぎて
向日葵が太陽に向かいグイグイと背を伸ばしています。ロンドン五輪が開幕し、睡眠不足の人もいるのではないでしょうか。体操の内村航平さんが予選で鉄棒とあん馬で落下し、まさかの結果。頬がこけ、表情から笑みがなくなる中で必死に立て直そうとする姿は、枝が折れてもなお太陽に向かって咲く向日葵のようです。原因の一つに練習で使っていた器具と違うことがあげられていますが、09年の世界選手権で個人総合優勝した時と、会場も器具も同じ。過度な重圧が原因だと思います。「プレッシャーを感じたことがないと」と常々話した内村さん。そうして自分に暗示をかけていたのではないでしょうか。“100mのボルトさんよりも金メダル確実”とされ、その期待に応えたいと、たくさんのものを背負ってしまったと思います。残る競技では自分だけのことを考えて、いつもの美しい演技をして欲しい。
重圧がこんなにも選手を硬くするのかと思う中、8月5日に行われる女子マラソンの日本代表選手は気持ちが楽だと思います。世界の高速化が猛烈に進む中、今春日本陸上競技連盟はメダルの目標を2個から1個に下方修正しました。残った1個は男子ハンマー投げで、減った1個が女子マラソンです。開会式の翌日、成田空港からロンドンに向け出発した尾崎好美さんを見送りましたが、テレビカメラが2台と記者が1人だけ。開幕後でほとんどのメディアがすでに現地入りしているとはいえ、少し寂しい感じも。しかし、選手はメディアの多さからも期待の大きさを感じ、それがプレッシャーになるものです。「元気にスタートラインに立ちます」と出発ゲートへと向かう尾崎さんは笑顔に溢れていました。
(共同通信/2012年7月31日配信)
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