増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2012年目次 > エッセイ第36回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2012

守りあってこその攻め

 タワーブリッジに掲げられたシンボルマークが五つの輪から三つの孤に。ロンドンパラリンピックにテレビの仕事で1週間滞在した私はゴールボールのとりこになってしまいました。この競技は視覚障害者が3対3で向かい合い、鈴の入った1.25kgの重いゴムボールを投げ合って相手のゴールに入れるもの。目隠しもするので完全に音だけが頼りです。
 準々決勝から決勝までの3試合を観戦しましたが、ブラジルやスウェーデンの選手と日本選手達との体格差には圧倒されました。大きな体を回転しながら投げてくるボールは速く、ゴール前に倒れこんで体を張って止める華奢な日本選手がひたすら耐えているように見えたのです。でもパワーで攻めてくる相手に対して徹底的に守る小宮正江さん、浦田理恵さん、安達阿記子さんの3人。声を掛け合いながら隙を見せずに守り抜く姿は、日本女性の丁寧さや堅実さを象徴しているようで涙がこぼれて仕方ありませんでした。
 決勝戦の相手、中国は世界ランキング1位の実力。体型は日本選手とあまり変わりませんが、ボールをバウンドさせ多彩な攻撃を仕掛けてきます。でも日本はここも辛抱強く守り抜き、攻撃では数少ないチャンスを絶妙のコントロールで射止め、見事1対0中国を破り金メダルに輝きました。会場は大歓声に包まれ、たくさんのイギリス人も日本の細やかな戦い方の勝利に感じ入っているようでした。「攻めることより守ることを重視した結果の金メダルです」と江黒監督も嬉し涙。
 文化や伝統はもちろん仕事や家庭でも、守ることが出来てはじめて攻めることができるのかもしれません。そんなことを教えてくれた日本チームのステキな金メダルでした。

(共同通信/2012年9月10日配信)

次のエッセイを読む 【2012年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。