駅伝快走、新谷さん
柿の実が曇り空にあかりを灯しているようだった分化の日、第23回東日本実業団女子駅伝が開催されました。さいたま新都心から熊谷スポーツ文化公園陸上競技場までの42.195キロ。2位と約3分半の差を開いて初優勝したのは、小出義雄代表率いるユニバーサルエンターテインメントでした。この差の開きは歴代2位。ゴール後、「新谷さまさま新谷さまだよ」と小出さんも満面の笑み。花の3区(12キロ)で新谷さんは2位の第一生命と10秒差のトップで襷を貰い、約2分の差を開いて4区へ襷をつないだのです。
第一移動中継車からその走りを目の当たりにしていた私は、新谷さんのバランスのよいピッチ走法に、マラソンも楽に走り切れるのではないかと感じました。それほどフォームに無駄がなく、風と一体化するような走りだったのです。ただ、「新谷は誰がなんと言おうとマラソンは嫌だというよ。人の3倍集中力があるのにね。」と小出さん。確かに大会前日、練習後の新谷さんに話を聞いた時もそうでした。
「ロンドン五輪の1万米9位を陸上関係者は喜んでくれますが、世間はやはりメダルでないと喜ばない」と話しながら、じゃあ次はマラソンかな?と私がふると、「マラソンは大変な準備が必要。良い結果を出す自信がない時に取りかかるものではないと思います」と。新谷さんの真面目な性格を感じました。すでに初マラソンの東京(2007年)では2時間31分台で走っています。ただ新谷さんが目指す頂きは高い。その目標に向かい、鍛錬を積む覚悟が自分の中に生まれるのを待っているのでしょう。24歳、大変な逸材であることは間違いありません。焦らずに歩んで欲しいと思います。
(共同通信/2012年11月5日配信)
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