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おしゃべり散歩道2012

二強並走

 強風が吹き荒れた12月16日、宮城県で行われた全日本実業団女子駅伝、愛称「クイーンズ駅伝in宮城」はユニバーサルエンターテインメントの圧勝でした。指導する小出義雄代表はレース後「やっぱり駅伝は最初が大事だね。青山が元気だったでしょ」とにっこり。日本三景の松島を眺めながら峠を越える1区を青山瑠衣さんが1位で駆け抜け、その勢いは最後まで途切れなかったのです。
 勝負と同時に見逃せなかったのは日本のトップランナーが集った3区の争い。まさに百花繚乱の華やかさでした。ロンドン五輪の5000m、1万mで「チーム日本」となり活躍した三人娘、福士加代子さん(ワコール)、吉川美香さん(パナソニック)、新谷仁美さん(ユニバーサルエンターテインメント)はレース前から再び競い合えることを楽しみにしていました。戦友のような3人の様子を見て「春の鳶寄り分かれては高みつつ」飯田龍太さんの名句を思い出したのです。そして3区には長い間日本の女子マラソン界を引っ張ってきた渋井陽子さん(三井住友海上)や、これから日本を引っ張っていきそうな若手の小林祐梨子さん(豊田自動織機)、田中華絵さん(第一生命)などの姿も。
 中継所で襷を待つ福士さんに渋井さんが駆け寄り何やら話しかけ、その後10位と11位で襷を受け取った二人は互いに口元に笑みを浮かべて並走し、猛烈に追い上げていったのです。緊張感の中にもそこだけ花が咲いているような光景。私は移動中継車のモニター画面で見て強く心を打たれました。しのぎを削り合い時代を創ってきた二人だから、肩を並べて走る喜びはひとしおだったのでしょう。復興に向かう宮城で清々しい笑顔に会えました。  

(共同通信/2012年12月17日配信)

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