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おしゃべり散歩道2013

チーム一丸へのこだわり

 半世紀以上の歴史があったエスビー食品陸上部が経営合理化の波を受け今年3月廃部になることに。発表となった昨年夏から次の所属先を求めてリーダーの瀬古利彦さんは奮闘していました。「有力候補が見つかった」、「いいところまで行ったけどダメだった」と一喜一憂していましたがソーシャルゲーム会社のDeNAに決まり、1月10日記者会見を開いたのです。朗らかな瀬古さんはDeNAの会長から駅伝は3年以内で優勝できますか?という質問に、はいと答えたそうです。そこにゲストで横浜DeNAベイスターズ監督の中畑清さんが登場。「アレは言ってはマズいよ」と中畑さん。それに対し瀬古さんは「ベイスターズよりも先に優勝しますよ」。「その確率は高い」とまるで漫才のよう。この明るさがとてもステキだと感じました。
 ところで瀬古さんが移籍先を探すうえで最後までこだわったことがあります。それは「選手とスタッフ総勢12名が揃っての移籍」でした。個々に移籍先を決めるのならばもっと早くに決まったはず。でもチームの歴史も含めて引き継いでくれることを大切にしていたのです。そこには1990年、北海道常呂町での合宿中の交通事故という悲しい出来事がありました。金井豊さん、谷口伴之さん、松尾昌徳さん、市来幸一さんのチームメイトが亡くなったのです。あの時の瀬古さんの落ち込みは大変なものでした。その悲しみから皆で立ち上がってきたからこそ、ずっとずっと一緒に歩みたかったのでしょう。記者会見で「エスビー食品にもDeNAにも感謝したい」と話す瀬古さんの言葉が心に染みました。監督室に飾られている4人の遺影も微笑んでいると思います。

(共同通信/2013年1月11日配信)

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