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おしゃべり散歩道2013

大丈夫!女子マラソン

 さとうきび畑の用心棒のように並ぶトックリ椰子。その横を赤と白の体操帽にランドセル姿の小学生が列をなして歩いていきます。見守る牛たち。1月下旬から2月上旬にかけて鹿児島県徳之島で全日本実業団女子陸上合宿が行われました。取材でお邪魔しましたが、のどかな風景とは裏腹にその練習の厳しさに驚きました。
 天満屋、ワコール、京セラ、十八銀行、ユニクロ等々10チーム以上の選手が参加。朝練習から速いペースで1時間以上走り、午後の本練習は1周2キロのクロカンコースでインターバル練習。その翌日はロードで20〜40キロ走と次から次へときつい練習を積み重ねていたのです。若い選手の中には悲壮感を漂わせる人もいました。ロンドン五輪5000、1万m日本代表でパナソニックの吉川美香さんは、30キロ走で後半にペースを上げ予定以上のタイムでゴール。練習後、「フルマラソンの準備を始めています!」と話す目には使命感が感じられました。
 今、女子長距離界はマラソンの立て直しをしようと、各チームの監督たちが一丸となっています。バルセロナ五輪から4大会連続でメダルを取ってきた日本ですが、北京、ロンドンと2大会連続で入賞を逃しました。「風穴を開ける選手が必要」と天満屋の武冨豊監督は話します。
 求められるのは、例えばアテネ五輪の時の野口みずきさんがみせたロングスパート。強豪のアフリカやロシアの選手たちは最後のスパートに長けているので、彼女たちに勝つには勇気を持った早めのスパートが大切なのです。今、それができる選手がいません。でも椰子の木が風で大きく揺れる中、歯を食いしばって走る選手たちの姿に「大丈夫!」と思いました。

(共同通信/2013年2月8日配信)

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