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おしゃべり散歩道2013

悲願の初優勝

 松島から仙台へ続く奥の細道は雪化粧。12月15日、風花舞うなか第33回全日本実業団女子駅伝が開催されました。レース前、スタート地点横の松島町文化観光交流館の中に監督たちが集まり「コースは除雪されたけど、ウォーミングアップで選手が転ばないようにしなきゃ」という会話も。デンソーの若松誠監督(41歳)が持つ襷にみかん色のお守りが縫い付けられています。尋ねると「熱田神宮です。信長が桶狭間の戦いの前に祈願しましたから」と。隣で「うちは宮崎の青島神社のお守り」と積水化学の野口英盛監督(33歳)。合宿中にお参りに行ったそうです。そして興味津々に覗き込んでいたユニバーサルエンターテインメントの五十嵐利治コーチ(32歳)も襷を手に「麻賀多神社です。うちは地元の佐倉の鎮守ですよ」と。皆さん最後は神頼み。人事を尽くして天命を待つ気持ちなのでしょう。
 27チームが出場した女子駅伝日本一戦を制したのはデンソーでした。悲願の初優勝で、就任5年目の若松監督は長渕剛さん似。上から目線を嫌う人です。よく「選手と一緒に成長したい」と話し、チームで写真を撮る時はいつも輪になってその中にさり気なく入っているのです。レース後、若松さんが「苦しい練習をさせたので、嬉し涙を流させたかった」と言った瞬間、選手全員の目から涙がこぼれ落ちました。辛さも喜びも、皆で共有しているチームなのだとつくづく感じ、私も貰い泣き。
 陸上長距離は、数々メダリストや日本記録達成者を輩出している小出義雄さんや藤田信之さん、三井住友海上を率いて全国を7連覇した鈴木秀夫さんなどの名伯楽がいます。この日、新しいタイプの指導者が日本一に輝きました。  

(共同通信/2013年12月16日配信)

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