増田明美のホームページ ビデオメッセージへ各種お問い合わせへトップページへ

TOP > おしゃべり散歩道 > 2014年目次 > エッセイ第11回
プロフィール
おしゃべり散歩道
イベント情報
出演予定
執筆活動
リンク集

おしゃべり散歩道2014

南相馬で運動や大合唱

 道端のスミレが春の陽ざしを喜ぶように咲いた3月中旬、福島県南相馬市を訪れました。友人で作家の柳美里さんは震災後、3年間ここに通い続け、地元のひばりFMでラジオ番組をボランティアで続けています。そこにお邪魔させて頂いたのです。「通い始めてから分かったのですが、祖父(李雨哲さん)が日本に来て初めて住んだのがここなんですよ。導かれたかもしれません」と柳さん。李さんはベルリン五輪で金メダルを獲得した孫基禎さんのライバルで、幻の東京五輪(1940年)の代表候補の一人でした。きっと長閑な田園風景の中を走っていたのでしょう。
 ラジオの収録の前に北部の鹿島地区にある仮設住宅を訪問。毎日行われているサロンの時間に一緒に歩こうと思いました。待っていてくれたのは70、80、そして90歳代のおじいちゃん、おばあちゃん約20人。「南相馬は今井正人さんの故郷ですね」と話かけると、「うちの孫の2つ先輩じゃった」「子どもの頃から町の代表で駅伝走っとったさ」と嬉しそうに話し、お喋りが止まりません。「じゃあ、そろそろ歩きましょうかと」誘うと、「毎朝歩いとるから、もういいわ」「話の方がいい」と即答。「でもせっかくだから少し体も動かしましょうよ」と柳さんに促され、私はロコモ体操(運動器の障害を予防する体操)を紹介。部屋の中で片足立ちをしたり、軽いスクワットをしたり。「簡単だね」とウケもよく、音楽があった方がいいかなと思い、私が森のくまさんや大きな古時計を歌うと、皆さんが続いて大合唱になったのです。歌詞を間違っては笑い、コミカルな動きに笑い、お喋りを楽しみながら体を動かすことの大切さをつくづく感じました。

(共同通信/2014年3月17日配信)

次のエッセイを読む 【2014年の総合目次へ】 前のエッセイを読む


Copyright (C)2001-2021 Kiwaki-Office. All Rights Reserved.
サイト内の画像・文章等の転載・二次利用を禁じます。