その陰で引退の報
蕗の薹の香りと苦みに春を感じる2月15日、ハーフマラソンの日本一を決定する第43回全日本実業団ハーフマラソン大会が山口市で開催されました。この大会は冬季練習を終えた選手たちの成果がみられ、今年活躍しそうな選手を占う上でも貴重です。私は女子を移動中継車から解説。優勝候補にあげた加藤岬さん(九電工)や岩出玲亜さん(ノーリツ)を押さえ、15キロ付近でテグ世界陸上の代表だった伊藤舞さん(大塚製薬)も振り切り、豊田自動織機の沼田未知さんが優勝。自己ベストを約3分更新して、1時間9分27秒の好記録の勝利に驚きました。
沼田さんはこの冬の鹿児島県徳之島での合宿を終えて見違えるほど成長したようです。「クロスカントリー練習を中心に体作りをしました」と監督の長谷川重夫さん。確かに締まった体に太いふくらはぎが練習のハードさを物語っています。沼田さんは立命館大学出身で、座右の銘は「トゥット・ベーネ(全て上手くいく)」というイタリア語。話しをしていても、物事をプラスにとらえる明るさが感じられ今後が楽しみです。
新星が誕生したレースでしたが、引退する選手もいました。第一生命の中心選手として長年活躍してきた勝又美咲さんです。2011年全日本実業団女子駅伝では強い向かい風の中、3区のエース区間で独走し、優勝を決定付けました。監督の山下さんは「自分から辞めたいと言ってきました。惜しい選手」と。故障もあり、2年間駅伝メンバーから外れている責任をとったのでしょう。勝又さんの所属する本社人事部から20名の同僚が駆けつけ、沿道に横断幕を掲げて大きな声援を送っていました。これも勝又さんの人徳。お疲れさまでした。
(共同通信/2015年2月16日配信)
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