超新星、前田さん
日本女子マラソン界に土筆が顔を出したかのような春の訪れが。3月8日、名古屋ウィメンズマラソンで前田彩里さん(ダイハツ・23歳)が2時間22分48秒の好記録で日本人トップ(全体では3位)でゴールイン。23分切りは2007年の東京国際女子マラソンで野口さんがマークして以来、約7年半ぶり。記録もさることながら、35キロ以降の一番苦しい時に、単独走でペースを上げていった強さが光ります。
両手を広げてゴールした彩里さんはそのまま林清司監督の胸に飛び込み、その後、応援にきていたお母さんの淳子さんとお姉さんの祐佳さんと握手。23歳のあどけない表情に戻りました。
この日、淳子さんは林監督と一緒に車で移動しながら6か所で応援。「私も猛ダッシュでしたよ」と話しますが、彼女もレベルの高い市民ランナーなので腱脚です。15キロの給水所で彩里さんが転倒した時、監督は脚への衝撃と給水が取れなかったことを心配していたそうです。でも淳子さんは20キロ地点で目にした彩里さんの平然とした表情に安心し、むしろ転んだ時「立ち上がるのが早かった」ことを称賛していました。瞬時の切り替えの早さは一朝一夕に身に付くものではなく、それも彩里の強さでしょう。
「一日に70キロ走ってもニッコリしてますよ」と林監督は話しますが、彼女の強さは走ることが好きだという気持ちと環境の良さでしょう。淳子さんは年にフルマラソンを3〜4回走ります。母を通して長い距離に対する平気な感覚が身に付いているのだと思います。また選手一人一人を娘のように温かく見守る林監督は、2年前にお父さんを亡くした彩里さんにとって父親のような存在。これからが楽しみです。
(共同通信/2015年3月9日配信)
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