ジョグ俳句はいかが
大正14年3月22日、東京芝浦の仮スタジオからラジオの試験放送が始まりました。それから丁度90年経った同日、NHKラジオの記念番組に出演。元NHKアナウンサーで現在は古典の紹介に注力される加賀美幸子さんとご一緒し、歴史的な放送をアナウンサーの声を通して振り返ったのです。その時間の何と贅沢だったことでしょう。
宮田輝さんが戦時中を回想し、「天気予報も国家機密になり空模様を話せなかった」と。また昭和34年、皇太子さま(現天皇陛下)ご成婚の中継では、沿道に集まった10万人の喜びが馬車のひづめの音と共に伝わりました。昭和36年、日比谷公会堂での立会演説会で、社会党の浅沼稲次郎委員長が刺殺された時の生放送の音声も。冷静沈着な中継をした大塚利兵衛さんが後に「自分に、おい、落ちつけよ、と言いながら手首に指を当てて脈を測ったんです。カタチで表すことによって意識を下げる、そこで喋り出しました」と当時を振り返っていました。「大塚さんは職場でも穏やかで落ち着いた方でしたよ」と加賀美さん。
そして昭和39年の東京五輪を私は市川昆監督の記録映画で知るだけでしたが、その時の実況中継も聞くことが出来たのです。開会式はテレビとラジオの中継があり、テレビを担当した北出清五郎さんが「世界中の秋晴れを全部東京に持ってきてしまったような素晴らしい秋日和でございます」と切り出し、ラジオの鈴木文弥さんは「開会式の最大の演出家、それは太陽です」と。独特の節があり、まるで講談師のよう。実は開会式の前日が大雨で、全国民が開会式のお天気を心配していたことを加賀美さんに教えて頂きました。音声に歴史ありの素晴らしい時間でした。
(共同通信/2015年3月23日配信)
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