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おしゃべり散歩道2015

大物感が漂う前田選手

 新緑で街全体が明るい緑色に包まれた5月10日、仙台国際ハーフマラソンが開催されました。女子の優勝は前田彩里さん(23歳・ダイハツ)。アップダウンが多いコースで風も強かった中、スタートして間もなく先頭に立ち、9キロからは独走でした。1時間10分24秒の好タイムでゴールした後、監督の林清司さんは「すごいよ、参りました」と一言。何故ならば、3月の名古屋ウイメンズマラソンを日本人トップの2時間22分台の好タイムで走った後、1カ月間故郷の熊本で休養。わずか2週間の練習で大会に臨んだからです。それなのにレース前に彩里さんは「監督、どこで仕掛けたらいいですか」と聞いてきたそうです。その度胸や雰囲気、全てにおいて大物感が漂います。
 そんな彩里さんに林さんは驚かされてばかり。名古屋のレース中、15キロ付近の給水所で転倒し、膝を強打したことを林さんは心配していました。でも、実は左手首を骨折していたのです。「時計でタイムを見る度に痛かった」と話す彩里さんに、「それでよくゴールできたよね」と林さん。今夏の北京世界陸上競技選手権に駒を進め、早くも日本代表となりましたが、林さんは「興奮と緊張で眠れない日もある」と話します。どこまで伸びるのだろうかと潜在能力の高さに興奮し、同時に故障をさせてはいけないと思う緊張感が常にあるそうです。それ程の逸材なのです。
 そんな思いをよそに、彩里さんは「今日は仙台でお寿司を食べに行きます。牛タンはもう頂きましたから」と無邪気な笑み。モットーは「自分らしく」で、そんな彩里さんの自由を大切に見守っているのが林さんなのです。初夏の新芽のように、これからグイグイ伸びそうです。

(共同通信/2015年5月11日配信)

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