明暗分かれた村山兄弟
第99回日本陸上競技選手権大会(6月26日から28日まで)を取材に新潟市へ。東北新幹線の車窓からは雨に濡れた稲が青々と背を伸ばして草原のようでした。
特に私が注目したのは旭化成の双子の新人、村山謙太、紘太兄弟。箱根駅伝でも活躍した二人は、いつ会ってもニコニコしていてチャーミングです。今回も初日に練習場で会うと「旭化成とてもいいです!」と私が尋ねる前に兄の謙太さんが話し「元気に走りますから見ていてください」と弟の紘太さん。二人はとても仲が良いのです。
翌日の男子1万mに謙太さんが出場。スタートラインでは曇り空なのに初めて見るサングラス姿。結果は見せ場もなく11位と惨敗。レース後、悔しそうにしていたので声をかけられないでいると、マネージャーの楠さんが「平常心を失っていたね」と私に一言。楠さんの話によると、謙太さんはドーピング検査用の身分証明書を忘れてきたり、海外用のユニフォームを間違って持ってきたり、少し舞いあがっていたようです。
そして3日目に行われた男子5000mは兄弟揃って出場。謙太さんは30位、レースを制したのは紘太さんでした。序盤から集団の前方につき、ラスト1周でスパートした大迫傑さんに喰らいつくと、最後の直線で一気にかわし、顔の前で右手を握りしめガッツポーズ。「(優勝候補だった)佐藤悠基さんが欠場すると聞いた時からポーズを考えました」と紘太さんは話し、隣で謙太さんが「かなり悔しいですが、弟が勝って嬉しいです」と。そのそばで総監督の宗猛さんが「双子は兄貴が優し過ぎて、弟が伸び伸びするんだよね」としみじみと話したのです。これからも励まし合い、刺激し合いながら、がんばって。
(共同通信/2015年6月29日配信)
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