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おしゃべり散歩道2015

高校生の頑張りに感動

 8月22日から30日までの北京世界陸上競技選手権の期間中は、梅原龍三郎さんの絵「北京秋天」の空の日も。澄み渡る青空に故宮の黄色い瑠璃瓦が映えました。日本選手団は競歩で谷井孝行さんが銅メダル、荒井広宙さんが4位。女子マラソンで伊藤舞さんが7位と、メダル1つに入賞2つ。結果だけみると寂しい気もしますが、「惜しい!あと一歩」という場面が多く、来年のリオ五輪につながる明るい兆しを感じました。
 私が解説した中では、女子5000mの尾西美咲さんと鈴木亜由子さんの走りです。この種目は世界の壁が厚く、自己ベスト記録でアフリカの選手達と約1分の開きがあります。豹のなかに羊が入って競争するようなものですが、2人は予選から先頭に立ち、速いペースを刻んだのです。アフリカ勢はラストスパートに絶対的な自信があるために、彼女たちが前を走るとジョギングのように遅くなってしまうからです。勇気凛々、先頭を引っ張り合った2人は、後半次々に抜かれはしたもの粘って粘って決勝に進出。決勝前に尾西さんは「私はこれが最後の世界の舞台になるかもしれません。何か後輩に残せる走りを」と話し、鈴木さんは「悔いのない走りをします」と大きな瞳を輝かせました。そして決勝でもスタートするや否や尾西さんが先頭を引っ張り、その後鈴木さんが変わり、鳥の巣スタジアムを湧かせたのです。その結果、鈴木さんが8位入賞にあと0.29秒差で9位に。自己ベストを約6秒上回る最高の走り。14位の尾西さんが鈴木さんに歩みより、「ヨシ、ヨシ」と頭を撫でる姿に涙がこぼれてしまいました。先輩が後輩に背中を見せながら、日本は世界との距離を確実に縮めています。  

(共同通信/2015年8月3日配信)

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