若い力に熱いまなざし
お盆休みの静かなビジネス街にジャージ姿の子どもたち。横浜文化体育館で開催された全日本ジュニア体操競技選手権大会を観戦に。この大会では2006年に内村航平さん、昨年は白井健三さんが総合優勝、次世代の五輪選手を育てる大会として注目されているのです。
「忙しいのによく来てくれましたね」と、走り寄って出迎えて下さったのは池田敬子さん。81歳とは思えない若々しさにビックリしました。そのことをお伝えすると「毎朝、逆立ちをしているからよ」と。サバサバした方で、私はお会いするまで緊張していましたが、すぐにほぐれてしまいました。
池田さんは1954年、ローマ世界体操選手権の平均台で日本女子体操史上唯一の金メダルを獲得した方です。優雅な演技と可憐さに「ローマの恋人」という愛称もついたほど。その後、メルボルン、ローマ、東京の五輪に3大会連続で出場し、東京では団体銅メダルの立役者でした。
今は、全国314の体操クラブで組織する全日本ジュニア体操クラブ連盟の副会長として現場の先頭に立っています。この日も全国各地の教え子たちが集まり、大会を支えている姿に池田さんの人望の厚さを感じました。その中の一人が「先生は30代の頃、大会で一緒に表彰台に上がったソ連の選手が10代だったことから、ジュニアの強化を決意されたんです」と話してくれました。若い力が伸びている海外勢を目の当たりにし、後輩の育成の必要性を感じられたのでしょう。それからこの大会や組織を作って40年、現場の人です。「増田さん、体操は線ですよ。特に選手の後ろ側の筋肉をみて」と熱い眼差しの池田さん。志のある生き方、漂う眩しさに感動しました。
(共同通信/2015年8月17日配信)
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