選手目線で施設整備を
栗やお芋の風味に食欲が増す秋、大日方邦子さん(元チェアスキーヤー・日本パラリンピアンズ協会副会長)とお食事を。様々な会議でご一緒していますが、大日方さんの発言はいつも一際スマートで、ゆっくりお話したいと思っていました。この日の話題は大阪で共に観戦したジャパンパラ陸上(9月19、20日、障がい者の日本選手権)。半年前までハンドボール選手だった日本体育大学3年生の辻沙絵さんが200mで優勝するなど、新たなスターの誕生に盛り上がりました。「指導者が選手の適性をみる目が鋭くなりましたね」と大日方さんも嬉しそう。ただ「ガッカリした」と2人で口を揃えたのは、観客の数です。それは数百人ほどでスタッフや選手の数の方が多い位でした。5年先の東京パラリンピックに向けて、どう観客を増やしていくかは大きな課題です。
ただ障がい者の皆さんの「みる文化」を高めようとする上でも課題があるようです。大日方さんはプロ野球が好きで、よく試合を観に行きます。「観戦中は問題ないけど、試合が終わった途端に人の波がドッとくるので、途中で抜け出しています」と。また入る時にも人の波にぶつからない時間を選んでいるとのこと。これは意外な盲点だと思いました。
ジャパンパラ陸上でレース後に義足の選手がジャージなどを置いたベンチに向かおうとした時のこと。そこがタイル張りで緩やかな登り坂だったため、スパイク付の競技用義足では滑って歩けません。急いで人工芝のマットを敷くことに。これから新国立競技場だけでなく、有明アリーナやアクアティクスセンターなどの施設も新設されますが「選手目線、市民目線が大切ね」と二人で話しました。
(共同通信/2015年10月5日配信)
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