思い出深い偉大な先輩
海を越えてゴーマン美智子さんの訃報が届きました(享年80歳)。様々なことが思い出されます。1935年に中国で生まれ、9歳から28歳まで東京や南会津で暮らした諏訪美智子さん(旧姓)。その後アメリカへ渡り、1970年代にボストンマラソンとニューヨークマラソンを2回ずつ優勝された、偉大な先輩です。
1982年、日本でも有名だったゴーマン美智子さんは千葉県船橋市で開かれた「ららぽーと10キロレース」にゲストとして参加されました。当時、成田高校3年生だった私はロードレースのデビュー戦に同じレースを走ったのです。そして当時の日本記録を2分以上上回るタイムで優勝することが出来ました。ところが関係者は「距離が短いのではないか?」と戸惑いの表情を隠せません。そこへゴーマンさんがいらして、「私も同じコースを走ったけれど、距離は正しいですよ。日本にすごい選手が誕生したことを喜んでください」と毅然とした表情で言われたのです。すごく嬉しかったことを覚えています。凛とした強さと温かさが全身から滲み出ている人でした。
それから2年後のロサンゼルス五輪を前に、私が監督とコースを下見に行った時に、サンタモニカの海岸に会いに来て下さいました。当時の私はかなり神経質そうに見えたのでしょう。ゴーマンさんは私の両肩に手を置き、「エンジョイしなきゃ」と優しい目で。ロサンゼルス五輪の女子マラソンを解説して下さったのもゴーマンさんでした。途中棄権して落ち込んでいる私の事を随分心配してくれていると監督から聞いたことがあります。
いつも優しく見守って下さり、ありがとうございました。
ご冥福を心からお祈りいたします。
(共同通信/2015年10月9日配信)
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